毎年、上野公園内の東京都美術館で開催されている『書教展』。
昨年はコロナで中止でしたが今年は無事に開催され、2年ぶりに上野駅へ。
見慣れた公園口改札はシックな色合いでお洒落に大変身、驚きました。
売店がなくなりスタイリッシュ
改札を抜けると道路も横断歩道も消えてなくなり公園と一体化。
左奥が精養軒のある東京文化会館
密になって信号待ちすることもなく、美術館や博物館が集合するアートエリアへの快適なルートになっていました。
振り返ると駅舎も素敵に
東京都美術館ではサーモグラフィーによる体温チェックにアルコール消毒、感染対策もしっかりと施されています。
9月19日(日)~26日(日)の会期中の最後の土日に、初めて受付を担当させていただきました。
20代の会社員時代に受付業務に就いていたことがあり、なんだか懐かしい思いでお仕事。
ご見学の皆さんには会場入り口で再度のアルコール消毒、お名前とご連絡先の記入のあとに入場となります。
第1展示室の中央には本会名誉会長、高木厚人先生の格調高い優美な作品。
おほらかに もろてのゆびを ひらかせて おほきほとけは あまたらしたり
会津八一の詞
(おおらかに 諸手の指を 開かせて 大き仏は天足らしたり)
その横に師の根本伸也先生による叙情豊かで最後まで生きた線が歌い上げているような作品。
万葉集 夏の相聞より 八首
その他先生方の大作、園児から学生、一般全ての世代の研鑚を積んだ作品は圧巻。
私は淡墨と濃墨を組み合わせた近代詩文書で出品させていただきました。
まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎(りんご)のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり
島崎藤村『初恋』より
淡墨の部分は青墨に藍色や金、黄色も混ぜてみたり、作りたてから時間の経過による色味の変化なども研究。
青春の瑞々しさ、「初恋」のイメージに合うブルーグレーの色を出すべく苦心しました。
作品は詩文選びから始まり、構成を考え、紙や墨、筆を試し、書き込み、表装を模索しと試行錯誤の末に生まれた愛おしいものです。
しかし展示されると同時に反省点や課題が見えるというその繰り返し。
今年は緊急事態宣言下の展覧会で作品を見ていただけるだけでもありがたいことでした。
初めて書道展を見た生徒さんからとびきり嬉しいご感想が。
「先生のが一番。薄い墨のところがカッコ良かった!」という小学生の男の子。
「先生が島崎藤村の「初恋」を書かれると聞いて少し学び、いい詩だなと思いました。」とお手紙をくれた女の子。
見ていただいて何かを感じてもらうことは本当に涙が込み上げるほど嬉しいもの。
また来年も頑張って新しくもっと魅力のあるものが書けるようにさらに精進していきます。
最後に、このような大変な状況下において多くの作品を集めて審査会から展覧会の開催まで成し遂げた書教関係者の皆様、本当にありがとうございました。
今回ほんの少しですがお手伝いさせていただき、大変なご苦労があったこと拝察しております。
心より感謝申し上げます。
下高井戸にある書道教室