2015.05.30
5月30日 心を繋げる書道 vol.2

 

『入社して最初に配属された部署の先輩たちに連絡することがあったのですが、そのうち1名の方はメールをされませんので手紙を書きました。

文字を読みやすくきれいに書きたいという願望は私にもあるのですが、出来上がったものはそうはいかず、かと言って出状しないわけにもいかず「えい、やあ」で投函してしまいました。

手紙は毎回冷や汗ものです。』

 

先日、かつての上司からいただいたメールにこのようなユーモアのある記述がありました。

2012年にご定年を迎えられ、お世話になった仕事仲間達で盛大にお祝いをして以来、ブログをいつもご訪問下さり見守っていただいている方です。

『入社して最初に配属された部署の先輩たち』とは、現在60代~70代以上の大先輩の方々でしょうからメールをされない方もいらっしゃるのでしょう。

お仕えしていた頃に常に目にしていた、温厚なお人柄がにじむ優しい筆跡が鮮明に思い出されました。

 

 

 『書の価値といふものは、技巧といふよりも、多分にその人によるものでないかと思ふ。

… 筋肉感覚を通して、簡単なる線とか点とかより成る字形によって、自由に自己の生命の躍動を表現するのである。』

 

日本を代表する哲学者である西川幾多郎も、エッセイ『書の美』の中でこう述べています。

書き文字はまるで影のように人について回り、人を思い浮かべる時にはその方の筆致も懐かしく想うものですね。

古来、「書は心画なり」(楊子雲)・「心正しければ、すなわち筆正し」(柳公権)などの言葉があるように、文字には書いた人の内面が表れると言われています。

『書は心の画である』とはなんとも素敵な表現ですね。

自分の思いを相手に伝えるために丁寧に書くということが心を表すのでしょう。

パソコンがこれほど普及した現代でも、手で文字を書く機会は意外と多いものです。

就職や転職に必要な履歴書、冠婚葬祭の記帳、保育園・幼稚園や学校との連絡帳、職場の伝言メモなど、むしろ直筆の注目度は増していると言えます。

しかし大人になれば自然に字が上手くなるかというとそうではなく、やはり努力しなければ良く書けるようになりません。

今更きれいには書けないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、意識して取り組めば必ず上達します。

 

 

 

 

5月は昇段級試験の月だったので、教室の生徒さんは普段より増して非常に熱心に課題に取り組まれました。

美しい文字を書きたいという意欲と、そのための学習の姿勢から生み出された文字にお人柄が表れています。

音楽家が楽器と一体になって演奏する姿が美しいように、ピンと張りつめた緊張感の中で人が書いている姿もとても美しいものです。

 

正確な字を覚えるのに最も大切な時期である小学生のクラスは、手作りのひらがな50音のプリントを少しずつ、お手本なしで書けるようになるまで毎回練習していきます。

 

 

 

 

 

 

なぜここまでひらがなをさせるかというと、日本語の文章はほぼ65%がひらがなで、ひらがながきれいに書けていると文章全体がきれいに見えるためです。

漢字は常用漢字だけでも2136字ありますが、ひらがなはたった48文字。

ひらがなの正しい形が完全に自分のものになるように、小学校の6年間繰り返し練習します。

小学2年から中学3年まで通っていた生徒さんで、受験のために教室をしばらくお休みされるという時に、お母様からこんな嬉しいメールをいただきました。

 

『〇〇は、字のことでは、学校の先生やお友達、地域の方々にもほめていただく機会があり、自信につながったと思います。

これも前田先生の温かいご指導のおかげです。深く感謝いたします。

先日、英語のテストの自由英作文の問題の解答にまで、「受験勉強のために書道のお稽古を休む…」という内容の英文を書いていました。

筆を持ち、半紙に向かうことは、静かな心になれる貴重な時間だったのだと思います。

この経験を生かして、これからの生活を充実させていくことを願っています。

今後ともよろしくお願い致します。』

 

彼が小学3年に書いた子供らしく元気のいい硬筆作品が残っていました。

 

 

 

 

小さな手に余るほど大きな筆を持って一生懸命頑張っていた男の子が、今は見上げるほど大きく爽やかな青年に成長。

 

 

 

 

まさに継続は力なりですね。

共に書の道を歩んで来れたこと心から嬉しく思います。 

 

 

 

 

 

さて、来週はデイサービスへレッスンに伺います。

花火大会のお誘いもちらほら聞こえてくる時期、七夕の短冊に願い事をしたためていただく予定です。

スタッフと共に夏の風物詩の浴衣を着て皆さんに非日常の世界も味わっていただけたらと思っています。

レッスンの様子は次回のブログで。

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