2019.06.10
6月10日 梅雨の合間に 

東京は先週末に梅雨入り、梅雨寒の日々が続いています。

 

 

 

 

降り続く雨になかなか外出する気分になれませんね。

そんな中、紫陽花が雨に打たれても初夏の太陽に照らされても華やかに目を楽しませてくれています。

 

最近の大人の生徒さんの素敵な話題を二つ。

「星空のきれいな場所に行きたいなあ。」とのことで、筆文字うちわを笑顔で制作されたRさん。

 

 

 

 

そしていつもお世話になっている『山口文林堂』山口社長から、「菅官房長官が掲げた令和と同じ額が入荷しますよ!」と楽しいお知らせ。

拝見するとさすがに高級感のある木製の額。

Kさんが一生懸命書かれた令和の書を表装していただき、ご自身も「自分で書いたとは思えない!」と大いに満足されていました。

 

 

 

 

こうして書道の学びを通じて個性豊かに心も身体も楽しんでいただけるととても嬉しいです。

私自身も夏の書教展に向けての制作が佳境に入り、筆文字デザインのお仕事もいくつか、平行して進めています。

作品になりましたらまたここでご高覧いただけたらと思います。

悩み苦しみ鍛錬の日々ですが、本格的な書からデザイン性の高い筆文字まで皆さんに幅広い書の魅力をお伝え出来たらと頑張っています。

そんな中、最高のリフレッシュは友人が主宰している『ねえ散歩』という心弾む街歩きの会。

老若男女問わず様々な業種の方が毎回楽しみに集まるお散歩です。

 

 

 

 

梅雨の晴れ間の先週末は井の頭線『駒場東大前駅』に集合。

広大な東京大学駒場キャンパスと加賀百万石といわれた日本一の大名、前田家が昭和の初めに構えた大邸宅を堪能しました。

仲間のために何度も下見を重ねて旅程表を作成し、「一二郎池は受験生は縁起が悪いので行かないほうがいい。」などユーモアを交えながらガイドさんのように案内してくれる友人には深く感謝するばかりです。

 

 

 

 

マイナスイオンたっぷりの森林浴に大きく深呼吸しながらのウォーキング。

ふと気づくとNHK大河ドラマ『いだてん』でおなじみの嘉納治五郎氏のプレート。

 

 

 

 

緑に囲まれたグランドでは、東大野球部も練習をしていました。

 

 

 

 

和やかにおしゃべりしながら歩みを進めていると視線の先に何やら大きく「禅」と書かれた看板。

 

 

 

 

近づいてみると、坐禅部の活動の場である「三昧堂(ざんまいどう)」という禅堂のようです。

 

 

 

 

社会人にも広く開かれている場のようで、いつかまたゆっくり坐禅に訪れたいなあと思いました。

そして東大をあとにし瀟洒な住宅街を抜け、いよいよ旧前田家本邸へ。

前田家といえば、こちらもNHK大河ドラマ「利家とまつ」で前田家の祖となった前田利家と正室のまつで有名ですね。

ここは昭和4年、利家から数えて16代目の前田利為(としなり)侯爵の時に建設されました。

生活の場と迎賓館を兼ねた洋館と、外国からの賓客に日本文化を伝える役割を担っていたという和館に分かれています。

まずは自然豊かな和館へ。

 

 

 

 

何十畳あるかわからないほどの和室。

欄間の透かし彫りや違い棚など、ほれぼれするような日本建築の粋を集めています。

 

 

 

 

ここで雛祭りや端午の節句といった伝統行事を家族で行われていたそうです。

襖には前田家の家紋『幼剣梅鉢紋』。

 

 

 

 

表もなんとも風情のある空間。

 

 

 

 

お庭も見事な日本庭園でした。

 

 

 

 

そして和館と渡り廊下(通常非公開)で繋がっている洋館。

 

 

 

 

建築当時、個人の邸宅としては東洋一と評されたという素晴らしい建造物に息をのみました。

 

 

 

 

侯爵がロンドン駐在武官であったことからイギリスのチューダー様式が取り入れられ、内部も贅が尽くされています。

家族のための小食堂。

 

 

 

 

銀食器類も全て本物だったそうです。

 

 

 

 

重厚な調度品は全てイギリスからのお取り寄せ。

 

 

 

 

こちらは侯爵の格調高い書斎。

 

 

 

 

菊子夫人のお部屋兼家族のリビングルームは温かみのある雰囲気でした。

 

 

 

 

広々とした夫妻の寝室。

枕元の壁面には守り刀が飾られていました。

 

 

 

 

そして、各部屋に意匠を凝らしたシャンデリア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お子様は一男三女で6人の家族に、住み込みと通いを合わせて使用人が136人いたとのことで、女中部屋へと続く廊下は途中まで豪華絢爛、その後急に簡素になるという人生の光と影。

 

 

 

 

 

評論家で1999年に亡くなられた長女美意子さんの「和館にお友達を呼んで遊んでいた」とか、「お部屋の窓から来客を眺めていた」などのエピソードを伺いながらしみじみと当時に思いを馳せました。

ご一家の暮らしぶりについては美意子さんのご著書「ある華族の昭和史」に詳しいとのこと、是非読んでみたいと思います。

 

 

 

 

栄華を誇った前田家。

軍人であった当主利為氏のボルネオでの戦死により一家は他へ移り、邸宅はGHQに接収されるなど苦難の歴史を経て現在に至ります。

イギリスの田園地帯を彷彿とさせる美しいお庭。

 

 

 

 

 

ここで家族でゴルフや乗馬を楽しまれていたそうです。

その華やかな過去を包み込み、この日はお母さんと小さな男の子がバトミントンをして遊んでいました。

激動の昭和から平成、そして令和へ静かに時を刻むこの場所。

耳を澄ますとかつて暮らしていた人々のざわめきが聴こえてくるような深い感動がありました。

 

Nさん、いつも私達に幸せなひとときを本当にありがとうございます。

次回の『ねえ散歩』も楽しみにしています。

 

 

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