今週木曜日は上野へ。
駅前ではレトロなデザインが可愛らしいバスが目を引きます。
ノンステップで人に優しく、上野や浅草などの観光名所をワンコイン100円で循環して台東区の街のシンボルにもなっている「めぐりん」です。
上野恩賜公園は、東京国立博物館、国立科学博物館などの日本を代表する多くの文化施設や、上野動物園や上野こども遊園地、国際こども図書館など家族で楽しめる施設も集まる憩いの場。
ここ数年で園内を大きくリニューアルして、豊かな自然に溶け込むオープンカフェが2店舗もオープン、清潔で安全な公園になりいつも大勢の来園者で賑わっています。
この日は初日を迎えた「第99回書教展」を見学に東京都美術館を訪れました。
東京都美術館も2010年4月から2012年3月末まで2年間全面休館して大規模改修工事が施され、外観は既存の重厚感を残しながらも内部はユニバーサルデザインで明るく快適な空間に生まれ変わっています。
本会役員の先生方の作品の中央には、名誉会長・高木厚人先生の強く奥深い線の迫力あふれた仮名作品。
「古池や 蛙とびこむ 水の音」 松尾芭蕉
そして代表理事・理事長 福島一浩先生の作品。
「一蝶に 草木海のごと 深し
光るとき 光は波に 花芒(すすき)」 冨安風生・稲畑汀子
すみれ色と群青色の美しいコントラストの表具と爽やかな色味の紙に、音楽を奏でているようなリズミカルな筆致が映えて、たとえようのないほどの優美さ。
副理事長で私の師である 根本伸也先生(写真右)と、91歳でますますお元気な書友の川戸和月先生と共に。
根本先生は書教でのご活躍の他に、色々な大学で教鞭をとられていて、現在は千葉大学教育学部で高等学校芸術科書道免許取得のための仮名や漢字仮名交じり書についての講義を受け持たれています。
私も書の指導をしていただく以外に、書道教室の生徒さんの作品指導や展覧会指導など多岐に渡って長年ご指導を仰いでいる、尊敬する師です。
この日の先生の作品も、すっきりとした濁りのない線が雅やかな世界を醸し出して、温厚なお人柄が浮かび上がって見えるようでした。
「ほろほろと 蝶あがるなり 萩の中
さまよへる ちさき蛍や 地蔵盆」 他3首 久保田万太郎・五十崎古郷 他
今年の書教展で興味深かったのは、先生方の個性あふれる落款。
落款とは、「落成款識(らくせい-かんし)」の略で、書画が完成した時に署名・捺印することです。
落款を入れて初めて作品は完成となり、誠心誠意を尽くしたという証明と作品を引き立たせる役割があります。
書の場合正方形が一般的ですが、円形やひょうたん型、三角形などいろんな外形や書体のものが作品に風雅を添えていました。
根本先生も「本当は作品ごとに合う印を作りたいぐらいだよ」とおっしゃって、作品を輝かせる印の大切さを感じながらの見学となりました。
自分で印に使う文字をデザインして彫る「篆刻」という書の分野もあり、私もいつか取り組めたらと思っています。
会場の終盤は、学生たちのパワーがみなぎる力作がぎっしりで圧倒されます。
前述の改修工事により公募展示室も空調や照明など全て更新され、とても鑑賞しやすくなっています。
床もタイル張りからカーペットになり、靴音も出ず歩きやすい都美の特注品だそうです。
小学校低学年の小さな子供たちの伸び伸びとした作品。
手に余るような大きい筆にたっぷりと墨汁を含ませ、大きく腕を動かして紙と格闘している姿が目に浮かぶようです。
一つ一つの作品が放つエネルギーをぐっと受けとめながら集中して、充実した鑑賞のひと時でした。
『第99回 書教展』 ~伝統の書美を翼に乗せて~
日 時 平成26年9月18日(木)~24日(水) 午前9時30分~午後5時30分(最終日は正午まで)
場 所 東京都美術館
主 催 公益社団法人 全日本書道教育協会
後 援 東京都・中華人民共和国駐日本国大使館・公益社団法人全日本書道連盟・読売新聞社
夏の暑さが和らぎ、秋めいた空気の中でアートを楽しむのに絶好のこの季節。
今日から4連休の方も多いのではないでしょうか。
お時間が合えば是非、上野公園へお運び下さい。
なお、都内各所でデング熱の報道が相次ぐ中、昨日は上野公園での感染の報道がありました。
20日現在、東京都美術館をはじめ園内にある各施設は通常通り運営するということです。
お出掛けの際は、「長袖・長ズボンの着用」「素足にサンダルは避ける」「虫よけ剤を使用」など、蚊に刺されないように充分ご注意下さい。
下高井戸にある書道教室