2013.06.11
6月10日 初夏の五島美術館

 

 

初夏の風が吹き抜けた週末の休日。

世田谷区上野毛にある「五島美術館」を訪れました。

こちらは、開館50年を迎えた2010年から、改修工事のため休館していましたが、昨年秋に約2年ぶりにリニューアルオープン、足を踏み入れることを楽しみにしていました。

 

 

 

 

 

 

この風雅な美術館は、歌舞伎座復興などを手がけた建築家の吉田五十八氏が設計。

所蔵されている国宝「源氏物語絵巻」と「紫式部日記絵巻」にふさわしい美術館にするため、平安時代の代表的建築様式である“寝殿造”の趣向を、外観や細部にまで取り入れた造りになっています。

また、開館翌年の1961年には、その時代を代表する日本の優秀な建築作品に贈られる、“建築業協会賞”も受賞しているそうです。

 

澄み切った青空に溶け込む和風のたたずまいは、現代の俗世間から引き戻されて、平安時代に迷い込んだような、みやびな世界です。

 

 

 

 

そして、約6000坪の敷地内には、美術館の他に、緑豊かな庭園が広がっています。

きちんと整えられた日本庭園ではなく、武蔵野の自然の面影を残した雑木林の中を歩いているような、広大なお庭。

庭園案内図の注意書きに、『基本的に「崖」ですので、「健脚コース」であることにご留意ください。ハイヒール・草履等での散策はお勧めいたしかねます。』と謳ってあるほどです。

山と自然を愛する友人と共に、足元に気をつけながら、ゆったりと散策を楽しみました。

 

 

 

 

茶室やあずま屋(休憩所)をはじめ、点在する石仏や石灯篭、四季折々の植物などの風景にも「わびさび」が感じられ、 造園については詳しくありませんが、書にも通じる芸術といえるものとして、知識を深めたいと感じる発見がありました。

 

 

 

 

色鮮やかな赤門の周りは秋になると紅葉が美しく、赤門が一層映えるとか。

季節を変えてまた訪れたい場所になりました。

 

 

 

 

さて、この日開催されていたのは、「近代の日本画展」。

館蔵のコレクションの中から、明治から昭和にかけての近代日本を代表する画家の作品約40点が展示されていました。

 

 

 

 

 

日本画を見ることで学ぶことの出来る、構図や、色彩感覚は、書を創作する際の大きな糧になります。

例えば、日本画では定番の富士山も、中央に描かれていることはほとんどなく、背景や印の位置なども含めた全体の絶妙なバランスのもとに成り立っています。

 

書で、1枚の白い紙に文字を配置する時にも、ただ真っ直ぐに並べたり、単純にバラバラにしたりするのではなく、空間のバランスを考えながらいかに美しく散らすかが、とても重要です。

書を学ぶ上で、優れた日本画を、よりたくさん鑑賞するように心がけていますが、この日一番印象に残った作品は、日本画家の巨匠、横山大観画伯の、四季の富士山を描いた四部作のひとつ、「冬 (霊峰四題の内)」。 (写真の絵葉書では左下)

実はこの作品、入館して展示室に入り、最初に目にしたものだったのですが、作品から放たれる荘厳なオーラに心奪われて、すぐさま足が留まってしまいました。

 

 

「私の富士観」横山大観   昭和29年5月6日 朝日新聞(抜粋)

富士の名画というものは、昔からあまりない。それは形ばかりうつすからだ。・・・

富士を描くということは、富士にうつる自分の心を描くことで、心とは、畢竟(ひっきょう=結局)、人格にほかならぬ。それはまた、気品であり、気迫である。

富士を描くということは、つまり己を描くことである。己が貧しければ、そこに描かれた富士も貧しい。富士を描くには、理想をもって描かねばならぬ。

私の富士も、けっして名画とは思わぬが、しかし、描くかぎり、全身全霊を打ち込んで描いている。・・・・・

富士の美しさは、季節も、時間もえらばぬ。春夏秋冬、富士は、その時々で、姿を変えるが、いつ、いかなる時でも、美しい。いわば無窮の姿だからだ。

私の芸術もその無窮を追う。

 

 

 

横山画伯のお言葉に、まだまだ未熟な自分の身の上を痛感するばかりですが、画家が絵で、音楽家が声や楽器で表現するように、私は書で表現出来たらと。

これからも、永遠に追い続けるであろうテーマです。

 

 

 

 

 

 

いつもブログを読んで下さったり、私の作品を見て下さったりして、寄せていただく皆さまのご感想が、とても励みになっています。

本当にありがとうございます。

この日五島美術館にて、夢と現実のはざまのような深遠なひとときを体感し、また一つ世界が広がったような気がします。

今後も、様々な分野の芸術を学びつつ書に生かせたらと思いますので、どうかよろしくお願い致します。

 

 

次回のブログでは、最近の創作をご紹介したいと思います。

 

 

 

 

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