限りなく細い三日月に、艶やかな梅の香漂う梅月夜。
柔らかい月光に照らされて、控えめに花開く情景を淡墨で表現しました。
明日は新月です。
日本最古の歌集『万葉集』には梅を詠んだ歌が約120首。萩の歌に次いで多く、桜の歌の3倍になります。
また、それは全て白梅であったと考えられています。
雪と月と梅の景色の取り合わせが多く詠まれていますが、こんな素敵な和歌がありました。
ひさかたの 月夜を清み梅の花 心開けて わが思へる君
紀小鹿女郎(きのをしかのいらつめ)
…空遠く輝く月夜が清らかなので、梅の花が開くように心を開いてあなたを待ち、お慕いしています…
女性は、毎夜月を眺めながら男性の来訪を待っていた時代の歌ですが、通信手段の発達した現代の恋人達の心にも届くのではないでしょうか。
「春告草」とも呼ばれ、厳しい冬の季節に一番に花開き春の兆しをもたらしてくれる梅の花。
梅の名所『世田谷区立羽根木公園』には、こんな俳句が刻まれた石碑があります。
外(と)にも出よ 触るるばかりに 春の月 中村汀女
…外に出てごらん。触れるほど大きいお月様が出ているよ…
春の穏やかな満月の夜。
母親がお勝手口から出てふと見上げた宵闇に、手で触れそうなくらいぼったりとした大きな月が。
その近さ、美しさに驚いて家の中にいる子供達に呼びかけています。
家族みんなが揃った夕食時でしょうか。
家族の温かさに包まれていた故郷の幼年時代が懐かしく思い出されます。
普段は気づかないでいても、何気ない瞬間に幸せを実感するものですね。
桜のような華やかさはないけれど静かにゆっくりと咲いていき、枝の隅々まで実を付ける梅。
幹はゴツゴツして太く、しっかりと大地に根を張って生きています。
全ての花に先駆けて咲く「梅」の語源は、「う(新しい命)」の「め(芽)」という意味や、旁の「毎」には、子供をたくさん産む母親という意味があります。
そしてその酸っぱい果実は、つわりの時の食べ物として効果的で赤ちゃんの成長にも一役買っているとか。
産みの苦しみを経て授かった大切な我が子。
子育ての苦労に耐えながらいつも子供たちの進む道に光を照らし続けてくれた慈愛に満ちた母。
冷たい雪の中でも一番に咲き、春の訪れを知らせ励ましてくれる梅の花と、世界でただ一人の母の存在が重なります。
現在お二人の女性の方からお母様に贈られる色紙のご依頼を受けて創作中です。
お二人の強い想いが伝わるように、書に心を込めたいと思います。
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