午後から大粒の雪が降りしきった28日木曜日。
所属する書道会の名誉会長で日本を代表する仮名書の重鎮、高木厚人先生の『KOREMADEの高木厚人展』へ出掛けました。
緊急事態宣言発令中の今、書道展では定番の銀座や東京駅周辺ではなく世田谷にある美術館で開催されるという稀少な機会。
自転車や車で短時間で行けて密が避けられる区内で行われるとは願ってもないことです。
書道界のプリンスと称される厚人先生、28歳の頃からの約70点もの素晴らしい作品の数々。
長年にわたるご研鑽と世界観がギュッと凝縮されている最高に贅沢な展覧会でした。
この日の感動を言葉にするのが難しいのですが、とにかく書道に携わるかたは是非ご鑑賞をお勧めします。
撮影はOKをいただきましたが、ブログでは遠景にとどめ作品の写真掲載は控えました。
線の美は是非会場で味わっていただけたらと思います。
作品を拝見すればするほど伝わってくる息遣いやリズム、8年前に見学した杉岡華邨展を思い出しました。
と、ここ(1階の展示室)までは一般的な書道展の展示スタイル。
「会場は2階にもありますので向かいのエレベーターで上がって下さい。」
と、係のかたの言葉にいそいそと上がった2階には、驚嘆の空間が広がっていました。
まずは大邸宅の玄関のような空間に、書がインテリアアートとしてピタリと融合。
モダンな玄関
一旦立ち尽くしながらも進んでいくと、次のお部屋は温もりのある照明も素敵な洋室。
スタイリッシュな空間に、仮名書が絵のような感覚で溶け合っています。
書斎・隠れ家
大きな水槽のきれいな水の中には心癒やされる熱帯魚が泳ぎ、壁際にはシンクも。
熱帯魚の泳ぐ水槽
こんなお洒落な自分のお部屋が持てたらなあとうっとりしてしまいます。
ミニバー
2階の展示室は、日常の暮らしと書が呼応した魅力あふれるテーマパークのようでした。
次の間、次の間をとのぞくたびにどんな世界が広がるのだろうと膨らむ期待。
足下は風情のある石畳
木や障子窓、畳に床の間のある和室は、現代ではほとんど目にすることがなくなってしまいました。
しかし純和風の和室に書のある風景は日本文化の美しさを最大限に演出しています。
現代数寄屋建築
遠い記憶を呼び覚ますような囲炉裏のあるお部屋には、野菜や魚の名前がひらがなで書かれたユニークな書。
家族や仲間と集まり楽しく団らんしているようなイマジネーションをかきたてます。
囲炉裏の間
そして空間のあちこちに、古典に立脚した伝統香る書が、書道を超越したアートとして響き合っていました。
厚人先生はたくさんの作品をお持ちになって会場に何度も足を運ばれ、空間に合う書を提案されたとのことです。
2014年にオープンしたという『平成記念美術館』は、平成建設(平成元年創業)という建設会社の一角にあるギャラリー。
住宅空間と美術工芸品の関係に着目し、作家による美術展を定期的に開催されるほか、社内でも毎年、社員の方による美術展を開かれているとのこと。
絵画や陶芸など社員さんの様々な作品の展示コーナーもありました。
昨年は、60代の社員の棟梁のかたが日展に初出品され、なんと入選されたとのこと。
人の手で生み出された物だと思えないほど繊細な美しさに息をのみました。
昨年からものすごいスピードで変化する時代だからこそ、変わらずあるものの素晴らしさに心から感銘を受けた一日でした。
入館したときは曇り空でしたが、外に出ると本降りの雪。
極寒の帰り道でしたが、心の中はポカポカでした。
会期は2月27日までと長いので、これからまた2回、3回と足を運んで勉強させていただきたいと思っています。
【KOREMADEの高木厚人展 ヌーベル賞から大臣賞までの軌跡 from1985~2018】
会期 2021年1月14日(木)~2月27日(土) 10:00~18:00
場所 平成記念美術館 世田谷区桜3-25-4(03-3426-1103)
休館日 日曜日
観覧料 無料
毎年1月は生徒達の学校の書初め展に行ってみんなの頑張りを見るのを楽しみにしています。
「書初め展入賞しました!」とメールやラインで嬉しい報告が舞い込む、心浮き立つ時期でもあります。
しかし今年は緊急事態宣言発令の状況下、区立の小・中学校の学校公開日は在籍生徒の保護者のみに限定とのこと。
残念ですが致し方ありません。(私立の感染防止対策はさらに厳戒態勢です。)
世田谷区立中学校の優秀な美術工芸が勢揃いする作品展覧会も今年はあるかなと心配していましたが、こちらは例年通り開催されました。
今日は写真中心でお届けしたいと思います。
久しぶりに訪れた世田谷美術館。
美しい自然に囲まれた美術館は、39.1haもの広大な砧公園の中にあります。
昭和41年まで、9ホールのゴルフ場だったという砧公園。
今は冬枯れの景色ですが都内有数の桜スポットでもあり、四季折々の自然に癒やされる区民の憩いの場になっています。
公園で遊ぶ人達も全員マスク姿でしたが、美術館も入り口からソーシャルディスタンスで並び、今や見慣れた手指の消毒とおでこでの検温。
名簿に住所・氏名・電話番号を記入して、問題なければこのカードがもらえて入室出来るいう厳重な感染対策。
しかし、館内は例年と変わらない迫力の空間でした。
一つの中学校全生徒の中から選ばれた、代表8名の作品。
中1で選出されたSちゃん、本当におめでとう。
小学校1年生から教室に通って6年かけて培われた実力ですね。端正な楷書が光っていました。
冬休みに「もう1枚、あともう1枚書いていいですか」と真剣に取り組んでいた姿が目に浮かびます。
書道以外の美術、技術、家庭科の作品もいつもながら圧巻でした。
和の文化継承も、中学生の紡ぎ出す世界のレベルの高さに舌を巻くばかり。
家庭科では、日常の閉塞感を打ち破るようなこんな夢のある粘土細工も。
今日20日は大寒、その名の通り外は厳しい寒さですが、場内は隅々まで熱気に包まれた展覧会でした。
書道教室も『心』の字の書初めから元気にレッスンスタートしています。
心を見つめて心を込めて『心』を書こうということで、色紙の裏には今年の抱負を書き記しました。
いつも通り鉛筆で字形もしっかり練習。
難しい筆遣いは何度も書いて身につけます。
高所から想いを込めて打ち込むRちゃん(小4)
清書の前には籠書きを書いて最終確認。
生まれて初めて筆を持つ1年生も緊張の中で頑張りました。
姉(小5)と弟(小3)それぞれの持ち味があふれる優しい心。
Cちゃん(中3)の伸びやかな心は大胆な運筆に吸い込まれてしまいそうです。
何を想い書いたか。
文字通り、字には心が表われます。
多少整っていなくてもデジタルでは表現出来ない、人が創り出すものの強い力。
書き手それぞれの心が入って生きて輝く『心』がたくさん生まれました。
世界中で困難が続く中ですが、みんな心も身体も健康な一年でありますように。
ご訪問ありがとうございます。
遅くなりましたが、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年のご厚情に感謝すると共に本年も何卒よろしくお願いいたします。
2021干支の年賀状 筆文字デザイン
昨年の新春ブログを読み返したところ、
『いつの時代も新年はおめでたいものですが、今年は新元号に東京オリンピックと何かがはじまる予感に満ちていますね』
と、なんというのどかな書き出し…。
まさか2020年がこんな一年になるとは思いもよりませんでした。
昨年が大変ではなかった人など誰一人いないでしょう。
今年は世の中が平穏になり、皆さまが心安らかに過ごせますように心から願います。
元旦は雲一つない快晴
帰省をあきらめて初めて東京での年越し。
初詣は人混みを避け、地元の住宅街にある八幡様へ朝早く行ってみました。
人の姿はほとんどなく新年の清新の気に満ちた境内。
このような状況下で参拝用の鈴は外されていましたが、新しい年の始まりを祝うような美しい幟旗に晴れやかな気持ちになりました。
勝利八幡神社
昨年からの日々、これからの不安や希望、切なる願いを託したおみくじがたくさん結ばれています。
私は中吉で、厳しくも温かい神様からのメッセージをいただくことが出来ました。
『古きを捨てて新しきにつくがよい あまり一つの物にとらわれ役にも立たぬことを思ってはだめです 元気を出して捨てるべきは捨て進む所へ進め』
なるほど。
おみくじは不思議なもので、いつもその時の自分に必要な気づきを与えてくださっているようです。
今年一年、胸に刻んで進んでいきたいと思います。
帰省を断念した代わりに書道教室は1月3日の書初めから元気にスタート。
また、友人のお誘いで、念願だった『現代書道二十人展』を鑑賞することも出来ました。
私が所属する書教の名誉会長、高木厚人先生の優美な仮名作品も4点展示されています。
一筋に精進してこられた書壇最高峰の先生方の作品が一堂に集まる二十人展。
日時を指定するweb予約制で人数制限が守られ、検温、消毒など万全の感染対策が施されていました。
会場内の撮影はNGでしたが、本当に目の眩むような素晴らしい作品の数々に触れることができ、とにかく楽しく高揚感で胸が一杯に。
ご招待や予約までして下さったHさん、本当にありがとうございました。
年の初めに強力なエネルギーをいただきました。
今年は2月末まで自宅で楽しむことも出来るそうです。
『第65回 現代書道二十人展』VR(バーチャルリアリティ)会場 観覧無料)→
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/gendaishodo/index.html
こうしてお正月があっという間に過ぎ、冬休みの学校課題の書初め指導も6日に全員終了して一安心。
大きな筆で真剣に筆遣いを練習するMちゃん(小6)
その矢先、7日に再び緊急事態宣言が発出されてしまいました。
しかし今回は学校への休校要請が出ず、世田谷区の運営する共用施設も「利用定員の50%以下・最低1mの距離の確保・飲食禁止であれば可能」というガイドライン。
区立の小・中学校は通常通り3学期が始まり、書道教室の施設利用も大丈夫そうでホッとしています。
おじいちゃんからもらった墨を嬉しそうに見せてくれるAちゃん(小5)
昨年も思いましたが、特に卒業年度の生徒たちにとって最終学期がなくなるのは非常に酷なこと。
このまま穏やかに思い出に残る学校生活を送ってほしいと願うばかりです。
レッスンの休憩中ソーシャルディスタンスで談笑
『年賀状、表も裏も全部筆で手書きで書いて、折り句も入れました!』
と、写真を見せてくれたTちゃん(高1)。
【た】いようのような明るさで
【い】つも周りを照らしてくれる
【へ】んかを恐れずに
【い】まを生きよう
なんとも称えようのない素晴らしさ。
書道歴7年、折り句歴5年と経験が積み重なっていくTちゃん。
年賀状を受け取った、たいへいさんもとても嬉しかったと思うけど、先生はもっと心打たれたかもしれない。
いつでもどんなときでも「想いは届く」、そんな希望の光が胸に差し込んだコロナ禍の初春です。
下高井戸にある書道教室