2026.06.20
6月20日 作品が旅立った朝のこと

先月のMIKAKO展にてM様にご購入いただいた作品の額装が出来上がり、表具店さん2名と私でワンチームとなりご自宅へ納品に伺いました。

お届けは日曜日の朝10時半の予定でしたが、横浜から車で運搬して来られた岡さん(美術表装「岡忠」さん)は1時間前の9時半に最寄り駅に到着。

その真摯な姿勢に作品を大切に扱って下さっていること、改めて胸に沁みました。

早めに家を出て電車に乗った私も、乗り間違えや遅延があったとしても絶対に遅れたくないという思いから40分前に到着。

 

 

凛とした駅名表示板に気持ちが引き締まりました

 

駅舎を出ると歴史を感じる旧駅舎がテーマパークのように可愛らしくそびえ立ち、岡さんが笑顔で出迎えて下さっていてフッとリラックス。

 

 

おとぎの国の入り口のような旧駅舎

 

駅前でお二人と合流した後、お約束の時間まで車の中で待機。

窓の外に広がる落ち着いた街並みに感嘆しつつ作品が無事に迎えられることを祈るような気持ちで過ごしました。

やがて時間に。

日本屈指の高級住宅街にたたずむ広大なご邸宅は洗練と静けさに満ちて、数多くの美術品が自然に息づくなんとも心地よい空間でした。

M様は大変細やかなお心配りでご対応下さり、作品をご覧になった時は、驚くほどの歓声で喜びを何度も伝えて下さって私も感極まり涙。

普段は裏方として黙々と仕事をされている岡さんにも、「(展示されていた時の)表装も気に入ったんですよ!」とあたたかなお言葉。

岡さんはあとで、「私たちの仕事はご希望通りに仕上げて当たり前で、表具をお褒めいただくことはほぼありません。ミスがあった時だけ言われます。直接こんなに喜んでいただける現場に立ち会えたのは初めてです。本当に良い経験になりました。」と感じ入っておられました。

 

 

京王プラザホテル アートロビーにて

 

そしてM様は各お部屋をご案内下さり、展示されている美術品について一つ一つ丁寧に説明してくださいました。

巨大で重い作品を安全に展示するための土台や吊り下げるピクチャーレールも作品ごとに最適な仕様と照明、インテリアとの調和まで考え抜かれていて、その美学と、ものを慈しむお心に感動。

作品を迎えていただいた場所がこんなにも美しく、こんなにも愛情深い方のもとであることが言葉に尽くせぬほど幸せでした。

お宅を後にする頃には、それはそれは清らかな気の通ったお住まいとM様の優しいお人柄に包まれた余韻で3人とも高揚感でフワフワに。

岡さんから「先生、今日ほんとものすごい体験をしたのでちょっと落ち着きたいし、どこか入って話しませんか⁉」とお声掛けをいただいて、車は田園調布を通り抜け環八のデニーズへ笑。

混み合う店内で順番を待ちながらようやく現実に戻った心地になりました。

「先生のお祝いだからご馳走します!」とおっしゃる岡さんとスタッフさんと私の3人で頭を寄せ合っていただいた、ちょっぴり辛いハンバーグカレードリアの味はきっと一生忘れられません。

その後、第三京浜で横浜に帰られる岡さんに二子玉川駅まで送っていただき、田園都市線で三軒茶屋、そして路面電車の世田谷線に乗り換えてトコトコと地元下高井戸へ。

電車の窓に流れるいつもの景色を眺めていると、さきほどまでいた世界がどこか遠い夢のように感じられました。

昨年の夏、七転八倒しながら毎日書き込みを続けたお部屋の光景がふと脳裏に。

 

 

草稿から300枚以上苦闘

 

作品は私一人で生み出せるものでは決してなく、作品を輝かせるために惜しみなく手を貸して下さった多くの人の支えがあってこそ、この日に繋がりました。

良きご縁に恵まれたことへの感謝の思いで胸がいっぱいです。

展覧会でたくさんの方に見ていただき、心通う物語を紡いでくれた「おなじ月を眺めている」。

もう会えないと思うと作品が一つの命であるようにも感じます。

どうか新しい舞台で、見て下さる方の心を月のようにそっと照らし続けてくれますように願ってやみません。

 

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