毎日メールでやり取りする現代、手書きの文字に触れる機会はずいぶん減りました。
しかし、そういう時代だからなのでしょうか、「字をきれいにしたい」とみなさんそう願い、習いに来られます。
多くの人が美しい文字に憧れる理由はなんでしょうか。
教室では、初歩の方向けの正しいひらがなやカタカナの書き方から始め、レベルに応じた実用書をみなさん一生懸命コツコツと書いていらっしゃいます。
レッスン以外でも、この夏は通信添削で多くの生徒さんが作品を書いて送って下さいました。
ビジネスマンのNさんの作品にはこんな素敵なコメントが。
8月はレッスンがなく、「提出までにどのように練習しようか・・・」と考えるため、普段とは違った感じで主体的に取り組めている気がします。計画・目標を立てることって大事だなあ、と改めて感じた次第です。
Nさんは、忙しい中もう4年近く通われて高段者になり、文字が美しく変化することも楽しんでいらっしゃるように感じます。
点画やレイアウトなど、細部まで配慮の行き届いた紙面は、信頼感や知性も感じさせます。
整った字で損をすることはありませんね。
実用としての書が上手くなると文字そのものの魅力に気づき、筆ペンや小筆、毛筆へと興味が広がっていきます。
「小学校の時の書道用具でも大丈夫ですか?」と、お尋ねになり入会されたHさん。
書道セットの中身は非常にいい状態で硯もピカピカ、学年とお名前が入った固めの筆で基礎の楷書からゆっくりスタートしました。
3ヶ月目で「行書用に新しい柔らかい筆が欲しくなりました!」と意欲的なお言葉が。
夜を徹してPCに向かう日々を過ごしていらっしゃるのはKさん。
時間を工面して教室に足を運ばれ、筆を執る時間をとても大切にされています。
レッスン時間をいっぱいに使って反古紙が積み上がるほど書かれ、表現の幅をどんどん広げていらっしゃいます。
どれくらいのペースで進むかは生徒さんの自由。
自身を高めたいと頑張る生徒さんに伴走出来ることは講師冥利に尽きます。
最近はペン字よりも最初から「毛筆を習いたい」と門をたたかれる生徒さんのほうが多くなりました。
日本人として、やはり手書きの文字の持つ力は果てしなく、尽きることのない魅力があるのでしょう。
せわしない暮らしの中で、少し立ち止まって書く時間を持つことも豊かに心潤わせるのではないでしょうか。
さて最後に書道展のご案内です。
私が所属しています全日本書道教育協会主催の書展が上野の東京都美術館で開かれます。
感銘を受けた武者小路実篤の言葉を、二尺×六尺(60㎝×180㎝)サイズの色画仙紙に書いて出品しています。
紙は、いつもお世話になっている三鷹の書道用品店『山口文林堂』さんでセレクト。
京都の染織家さんの手による、青みがかった淡いグレーのグラデーションのそれはそれは美しい紙を取り出して下さいました。
ずっと眺めていたくなるような静かな迫力のある紙で、見た途端に心高ぶりました。
表装された作品とは私も会場で初めて対面します。
展覧会は、インテリアにも合う小作品から、先生方の大作まで、多様な書美の世界が広がります。
高い天井まで埋め尽くされた子供達の作品からは大きなエネルギーがもたらされることでしょう。
是非、初秋の上野公園へお運びいただけたら幸いです。
ご指導賜りたく、謹んでご案内を申し上げます。
【第102回 書教展】-伝統の書美を翼に乗せて-
日時:平成29年9月20日(水)~26日(火) AM9:30~PM5:30(最終日は正午まで)
場所:東京都美術館2F(上野公園内)
内容:役員・一般部・学生部・席書大会作品(毛筆・硬筆部門あり)
9/24(日)13時から根本伸也先生による作品解説が行われます。
下高井戸にある書道教室