4月20日付のブログ「希望の花が咲く」で書いた、97歳R子さんの「希望」の書の感動も冷めやらぬ数日後。
~奇跡の歌から、希望の歌へ~
というサブタイトルの、「上を向いて歩こう展」(@世田谷文学館)に、行って参りました。
坂本九さんの歌は、「上を向いて歩こう」や、「見上げてごらん夜の星を」も然りですが、日本人なら誰でも口ずさめるシンプルなメロディと、シンプルな歌詞の、何が、広く人々の心をひきつけ、歌い継がれていくのでしょうか。
日本人が初めて、全米1位を獲得した奇跡の歌が、世代を超えて親しまれる希望の歌といえる存在にまで成長した軌跡を、観ることが出来ました。
~上を向いて歩こう 涙がこぼれないように
思い出す春の日 一人ぽっちの夜
~見上げてごらん 夜の星を
小さな星の小さな光が ささやかな幸せをうたってる~
館内に足を踏み入れると、坂本九さんの懐しい歌声が流れ、当時の白黒の写真や映像、自筆の楽譜や台本、数々のレコードジャケットなど貴重な資料が展示されており、幼少のころに返ったような、なんとも温かい郷愁に包まれます。
さて、名曲、19歳の坂本九さんが歌う「上を向いて歩こう」(作詞:永六輔・作曲:中村八大)は、「SUKIYAKI」として1963年に全米チャート第1位を獲得し、今年の6月で丸50年、次の全米ナンバーワンヒットはまだ生まれていないそうです。
その後、世界中でヒットしたこの曲は、国内外で多数のアーティストによってカバーされ続け、最近では、2011年に公開された、ジブリ映画「コクリコ坂から」の挿入歌として、若い世代からも多くの支持を得ました。
「コクリコ坂から」は、1963年の横浜が舞台の、高校生の純愛物語で、東京オリンピックを目前に活況を見せつつも、素朴な温もりのある当時の雰囲気を、坂本九さん本人の歌声が、効果的に彩っています。
そして、やはりこの曲に、時間を超えた普遍性を感じたのは、東日本大震災のあと、人々が最初に思い出して共に歌い、励ましあったことでしょう。
展示されていた、坂本九さんの言葉が印象的でした。
幸せとは一体なんだろう、なんて、オーバーなものでなく、例えば、一刻でも、苦しみ、悲しみを忘れさせてくれるもの、それが映画でも、芝居でも、オモチャ、人でも何でもいい、その、忘れさせてくれるもの、それを僕は幸せのお使いと呼びます。
「上を向いて歩こう」
何度聴いても、いつ聴いても、なぜか心が熱くなるこの歌は、坂本九さんのあの笑顔とともに、その想いが、一度聴くと忘れられない魅力的なメロディに乗って、国境や時間を超えたのでしょう。
「上を向いて歩こう」展 ~奇跡の歌から、希望の歌へ~
2013年4月20日~6月30日
世田谷文学館
私が歩んでいる書道の道も、果てしない探求の道。
深く学ぶこと、丁寧に教えることの出来る環境に感謝し、見た人を元気づけられるようなパワーの宿る作品を創作することに、希望を抱いて、更に真摯な気持ちで取り組もうと、心が上を向いた、ありがたい一日でした。
ゴールデンウィークは、故郷山口へ帰省します。
短い期間で、どれだけ親孝行出来るかわかりませんが、久しぶりに親子水入らずの時間を過ごすひと時が、楽しみです。
美しい錦帯橋界隈の写真も撮って来たいと思っているので、また後日のブログで。
本日、木曜日夜の一般クラスのおけいこの様子。
みなさん、それぞれの課題に熱心に取り組まれています。
撮影してくれたのは、学生クラスに通っている、中学生カメラマンのS・Tくん。
親御さんが写真家で、今日はプロ並みの装備で撮影に挑んでくれました。
この写真は、私のデジカメですが、その他の写真はまた後日のブログで。
陽光うららかな春の日の午後、おなじみの杉並区のデイホームへ、出張指導に訪れました。
この日は、「春にまつわる言葉」のお手本を数種類ご用意、目から春を感じていただきながら、BGMにはNHKの東日本大震災の復興応援ソング、「花は咲く」が流れます。
「花は 花は 花は咲く~」という透き通った合唱のリフレインに、耳からも春の雰囲気が伝わり、室内が優しい空気に。
「花は咲く」
岩井俊二作詞(一部抜粋)
真っ白な雪道に 春風香る わたしは なつかしいあの街を思い出す
叶えたい夢もあった 変わりたい自分もいた
今はただなつかしい あの人を思い出す…
花は 花は 花は咲く いつか 生まれる君に
花は 花は 花は咲く わたしは 何を残しただろう
やわらかな空間で気持ちを落ち着かせて、ゆっくりと墨を磨り、心地よい墨の香が立ちのぼってきたところで、筆を執っていただきます。
この日は10名のご参加で、私と仲間2名、ホームのスタッフ4名で協力しました。
ウォーミングアップの基本練習では、「小学校以来初めて筆を待ったよ」という方や、「難しい!ここはどうやって書くんですか?」などの声が飛びかい、徐々に賑やかに。
皆さんに声を掛けながら、筆に手を添えながら駆け回っていると、汗ばんでくるほどの熱気で、皆さんも「暑い暑い」とのことで、窓を開け、服を1枚脱がれる場面も。
「書は人なり」といいますが、ご高齢とはとても思えないような、若々しく豪快な筆遣いで書かれる方や、可愛らしく艶やかなフォルムの書風の女性、女性でも男性的に鋭く荒々しい線を出される方など、長い人生経験が文字に表れて、私もとても勉強になります。
集中しておけいこに取り組み、よい作品が出来上がった時の表情は何とも素敵です。
おけいこのあと、達成感に包まれた皆さんとのお茶の時間は、お喋りが尽きず、和やかな笑顔の花が満開に。
中でも、最高齢のR子さんは、いつも私達の訪問を喜び一杯に表して迎えて下さり、終了後はスタッフに身体を抱えられながらも出口までお見送り、握手や、抱き合って名残りを惜しまれます。
おけいこ中も、「家でもっと練習してきます。」「次までに頑張ってきます。」と何度もおっしゃりながら何枚も書かれて、素晴らしい清書に仕上がりました。
R子さん97歳の書は「希望」。
大筆にたっぷり墨を含ませ、しっかり力強く書かれた「希望」の文字に、生き方が表れています。
NHK「花は咲く」のPVで使用されている花はガーベラで、その花言葉は「希望」。
この日のBGMは、R子さんの、明日を信じて未来へ向かう姿勢の、応援歌だったのでしょうか。
皆さんそれぞれの人生で、いくつも花を咲かせて来られ、今、穏やかに筆を執り、書に思いを馳せていらっしゃるひと時をご一緒出来て、とても光栄に思います。
これからも、末長くお力添え出来ますように。
暖かな日差しに、新緑が美しく映える今日この頃。
新学期や新年度を迎え目標を立てて挑戦したくなる時期なのでしょうか、書道教室のお問い合わせが大変増えてまいりました。
今日は紙上にて、書道教室の学生クラスを中心に少し触れてみたいと思います。
2000年秋に、世田谷区桜上水で開いた書道教室ですが、赤堤の自宅教室を経て現在のしもたかステーション教室に場を移し、開室から13年目を迎えました。
しもたかステーション教室は、駅から徒歩1分の便利で活気ある商店街の中にあり、世田谷という文教地区でもあるので、世田谷区や杉並区などお近くの方を始め、学校帰りやお勤め帰りの方、遠方からの方も電車で気軽に立ち寄り楽しく学ばれています。
生徒さんは小学校1年生から80代の方までの幅広い年齢層、目指すものは皆さんそれぞれですが、書道上達の秘訣はまず書くことが好きになることが第一歩。
自ら率先して書き、素直な気持ちで長く続けられれば大きく伸びていきます。
そのために、初めての方でも安心して習え、個性を生かして楽しく書道を学ぶことが出来てさらに確実に力がつくように、おけいこを工夫しています。
まず、一般クラス学生クラス共通で、毎回ウォーミングアップとして、お手本を見て硬筆で自分のお名前の練習をすることから始めます。
名前は、一生のうちで一番たくさん書く文字なのでさらっと美しく書きたいものですが案外苦手意識を持っていらっしゃる方が多く、意識して書くことで見違えるように整ってきます。
そのあとは、お一人お一人のご希望に応じてカスタマイズした教材でのおけいこに移ります。
学生クラスは小学校低学年のうちは硬筆のみですが、学校で習字の授業が始まる3年生になる前あたりからは全員、毛筆と硬筆のおけいこを行います。
心がけているのは、筆記具の正しい持ち方、正しい姿勢、そして正しい書き順で、ゆっくり丁寧に書くこと。
特に小学生の間は、ひらがなとカタカナの正しい字形を覚えるため、かな50音の中から毎回数文字ずつを10分間程度繰り返し練習する ことを続けます。
現代文は6~7割がかな書であるため、かなが上手に書けていると文章全体がバランスよく見えるからです。
硬筆を学ぶことで身についた字形は、毛筆を書くときにも役立ちます。
毛筆は用具の取り扱いや筆遣いが難しい面がありますが、硬筆でしっかりと字形を把握していれば、筆づかいに集中することが出来るので毛筆の技能を高めることにつながるのです。
また、毛筆で書くことは、筆で大きく書くことで硬筆では気づきにくいトメやハライなどの点画をはっきり理解することが出来、筆を使用している緊張感からくる神経の集中によって、整えて書くための態度や、豊かな人間性を育成するというねらいもあります。
このように、毛筆は硬筆の基礎を担うものとしても大切ですが、同時に一生の宝になる美しいペン字を身に着けて欲しいということで、毛筆と硬筆を両方とも同じように力を入れています。
おけいこの方法としては、写し書きや籠書き(毛筆で、筆圧のかけ具合の感触をとらえるために画の輪郭を写し取って書くこと)などの手法も取り入れ、お手本の模倣を通じて個性を開花させ、将来のいろいろな創造性に飛躍させていければと願っています。
そうはいっても、やはり昔ながらの練習方法である身体を寄せて手に手を添えて一緒に筆を執り、一緒に書いて運筆の遅速緩急を掴ませるのが一番効果的のように思います。
学生のやわらかい手に、熱意も伝わるのでしょう。
そのため、出来るだけ生徒のそばに行けるように定員8名の少人数指導をしています。
こちらは、毛筆手本の一例です。実際は肉筆のお手本で練習をします。
一般クラスも、ペン習字、筆ペンの実用書、毛筆の基礎、古典の臨書など、ご希望に沿って学習のお手伝いをさせていただいています。
ご自宅での日々の練習もおすすめしています。
書道は年齢に関係なく楽しめて実用性もあり、通常のサイズのものを書くのでしたらさほど体力もいりませんから生涯を通じて続けられるので、本当に皆さんの興味も尽きることなくさまざま。
私もそれに応じて一緒に学ばせて頂いているような気が致します。
おけいこの基本方針は学生クラスと一緒ですが、大人の場合はさらにおけいこが精神統一の場であったり、癒しの場であったり。
また、書が心を伝えるものとして表現出来るようになるよう、精一杯務めさせていただいています。
10代20代を中心に、70代80代の方々も一つの教室で和気あいあいと学ばれている一般クラスの様子も、写真と共に後日綴りたいと思います。
また、来週は杉並のデイホームへ書の指導に出向きます。
天候に恵まれれば着物で伺い、春にまつわる言葉を書いていただく予定です。
ホームの皆様に、墨の香りとともに、ひととき和の雰囲気に浸って楽しんでいただけたらと思います。
その様子は次のブログで。
春の嵐が明けて。
明日ありと 思う心の あだ桜 夜半(よわ)に嵐の 吹かぬものかは 親鸞
主役は、ソメイヨシノからしだれ桜へ。
願わくは 花の下にて春死なむ その如月の 望月のころ 西行
散る桜 残る桜も 散る桜 良寛 辞世の句
下高井戸にある書道教室